有機化学 基礎の助け pt.3

化学

ryu.です。

炭化水素の反応

ここからは一度炭化水素、すなわちCとHのみで構成されている化合物に話を戻し、その反応性について考えてみよう。

付加反応

まずはアルケンとアルキンの付加反応について考えていく。基本的に付加反応に関してはこれらの二重結合ないし三重結合になっている部分に別の物質が結合することで別のものになる反応を言う。元の物質にこうした単純な物質が「付加」している反応であるので名前からの想像は易いであろう。
アルケンやアルキンに付加しやすい物質として水素、ハロゲンの単体、HAで表される「〇〇化水素」などが挙げられる。これらの単体や化合物は二つに分裂し、二重結合や三重結合をになっている炭素原子に対してその結合を開裂させて強引に結合するものであると考えて良い。この時、元々の二重結合や三重結合は単結合ないし二重結合になり、これは反応を進めていくといずれ全て単結合にすることもできる。ちなみに図にもある通り、水素を付加することで同じ炭素数のアルケンからアルカンへ、またアルキンからアルケンへ変化する際には白金もしくはニッケルを触媒として反応を進めていく必要がある。

なお、下の図にある通り、CH\(_2\)=CH-基のことをビニル基といい、ビニル化合物として様々な物質を合成することができる。これらに関しては付加重合という操作によってポリ塩化ビニルなどの馴染みある高分子へと姿を変えていくのだが、それはまた別の話。

置換反応

続いては、アルカンに対する反応であり、炭素原子に結合している原子が別のものに「置き換わる」ことから命名されている置換反応をみていこう。
基本的にアルカンは安定で反応性には乏しいのだが、塩素や臭素などの気体と一緒に封入して光などのエネルギーを与えてやると、アルカンの水素原子がこうした塩素原子や臭素原子に置き換わることがある。例としてメタンを挙げてみると、順に以下の5つの状態が存在することになり、次第に反応が進んでいく。

アルコール・カルボン酸の性質

アルコールやカルボン酸には特有の性質が多く存在しているので、それについて順を追って見ていこうと思う。
まずは両者ともに起こる反応で、金属ナトリウムの単体と反応させると水素が発生するという反応である。これはヒドロキシ基を持っていることによって生じる反応であり、逆にいえばそれを検出するためのものである。反応の性質としては酸化還元反応の一つである。なお、アルコールに関してはR-ONaという物質が生じ、それをナトリウムアルコキシドと言うがこの単語自体は覚えなくていいと思う。

逆に似たような反応でカルボン酸にしか生じない反応がある。これはカルボン酸に水酸化ナトリウムなどの塩基と反応することでカルボン酸の塩と水が生じる。こちらに関しては反応機構は酸と塩基の中和反応であり、これはカルボン酸は弱酸性であることに由来する。一方、アルコールに関しては中性であることからこの反応は生じない。

また、カルボン酸に特有の反応でもう一つ重要なものがあるが、これは炭酸水素塩や炭酸塩の水溶液にカルボン酸を加えると二酸化炭素が遊離するものである。これは弱酸遊離反応によって生じるものであり、カルボン酸よりも炭酸が弱い酸であるということに由来する。まずより弱い酸である炭酸が遊離するのであるが、炭酸はすぐ水と二酸化炭素に分解されるので、結果として「二酸化炭素が発生した」という表現で表されることが多い。

最後にアルコールのみに生じる反応について考えていく。アルコールの分子内・分子間脱水反応についてである。アルコールに含まれているヒドロキシ基と水素原子とが分子内から取れることで別の化合物を生じると言う反応である。ここでは最初に脱水反応を起こすための条件について押さえておくが、アルコールを油浴などで高温度に加熱したのち、加熱した濃硫酸とともに反応させると分子内、ないし分子間で水分子が取れる、というわけだ。ここで濃硫酸を用いる理由についてだが、もちろん濃硫酸には脱水作用があるためである。無機化学の該当部分を復習してみよう。
分子内、ないし分子間といったが、実は油浴でアルコールを温めておく温度によってどちらかが変わってくる。下の図にも上げてある通り、より高熱であれば分子内でヒドロキシ基と別の炭素原子に結合している水素原子は脱離してそこの炭素間が二重結合になるのであり、一方で低温であれば二つのアルコール分子間でヒドロキシ基が一方からは丸ごと、もう一方からは水素原子のみが脱離して、エーテルとして結合する。

以上で脂肪族有機化学の基礎的な部分について説明を終了したいと思います。ここで取り上げた内容は脂肪族の内容のうち6割強程度に過ぎないので、個別の物質の製法や特例的な化合物の特徴、有機化合物の名称なども含めて教科書や参考書等を利用しながら進めていってほしいと思います。あくまでこの3ページは勉強の一助として利用していただければ嬉しいです。もう少し高度な内容や芳香族などの続きの分野に関してもまた作っていきたいと思いますのでどうぞよろしくお願いします。

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