絶望の起床

聖夜まで間もないこの頃、彼が意識を取り戻した時に窓が紺色や黒色ではなく、水色に塗られていたという状況がいかに彼に絶望を与えたか。普段からよく空の色や影の方角で起きた時間を判断していた彼は、その「ヤバい」事実に気付くと考えるより先に手元の時計を確認した。するとそこには「8:27」と表示されていた。
注:日の出自体は6:50程度だが、支度を考えると完全に明るくなる前に起きていないと相当まずい。

そこからは一瞬である。コンタクトレンズもはめず髪も整えずに最低限だけ支度を済ませ、彼は起きて2分も経たずに家を飛び出した。
そこより先、乗り換えでは常に走り、なるべく早く!と数分遅延していた電車に静かに野次を飛ばしていた。

絶望感。
遅刻に対する焦燥。
家族へ遅刻で本試験を落とした報告をする不甲斐なさ。
貴重な春休みが追試で消える恐怖。

自分の力で距離を詰めることのできない電車に乗っている間は様々な思いでいっぱいになっていた。

そうして冒頭に戻るというわけである。

結局…

結局のところ、10時には間に合わなかった。最後の5分、ダッシュで体力を持たせるのは大学に入ってから日常的に運動をしていない彼にとってはどだい厳しい話であった。

しかし、試験開始までに少々ディレイがあったため、結果的に試験を受けることは出来たのである。
実はこの試験、先輩から「1分でも遅れると試験受けさせてもらえない」という情報をもらっており、現に彼以上に遅れて試験開始後に講堂に入ってきた者は即撤退を命じられていたようである。

安堵に包まれながら音もなく息を整え、畢竟試験ではまあ上々の結果を残すに至れたのである。
優をくれた先生方マジでありがとう…!!!!

…慢心であった。
大事な試験前、自然と睡眠時間も短くなっていた為なんとかなっていた今までと違い、本気で死の淵であった。

前期試験を終えた今のタイミングで忠告するのはなんか違う気もするが、試験への周到な用意以上に大事なことがあることを忘れてはならない。
とりあえず、お前はいっぺん寝とけ。あと普段からちゃんと勉強しろ。

p.s. 東大医学部は不真面目多い。

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