数学 pt.1 標準〜応用演習 確率漸化式 前編

数学

ryu.です。
今回は数学編ということで、頻出テーマの確率漸化式について書いて行こうと思います。確率漸化式は苦手とする人が多いとは思いますが、実は慣れてしまえば解法のバリエーションが乏しいので比較的得点源にしやすい分野です。問題演習多めで行くので、その中で雰囲気をつかんで行って欲しいです。

基礎問題1

さて、今回は先述の通り問題の割合多めでやっていこうと思う。そして、今回のテーマ上、基礎的な確率および基本的な漸化式についてはある程度知っている前提として話を進めさせてもらうが、もちろん丁寧に説明をしていこうと思っているのでご安心を。
まず確率漸化式の問題を解く流れとしては、
1. 状態の推移の仕方を実験し、図として表す
2. 適当な連続した2段階(n回目とn+1回目など)を取り出してその関係性から漸化式を立てる
3. 漸化式を解く
が基本的だと思う。どの段階も一つ一つ丁寧にやっていくことで比較的容易に捌いていくことができるはずだ。以上を確認した上で問題に移っていこう。

1辺の長さが1の正四面体のうち、一つの面だけを赤く塗り、残り三面を白く塗る。
初めに赤い面を底にして(見えないように)地面に置き、1秒毎に正四面体を1段階だけ無作為に回転させて現在の面と異なる面が底にくるようにする。この操作を繰り返していくとき、n秒後に赤い面が底に来ている確率をnを用いて表せ。

まずは流れに倣って状況を整理していこう。
基本的にここで現れる状況のパターンとしては赤が底にきている時とそれが白の時との2パターンしかない。この二つでやりとりが行われると考えよう。ではここから遷移の仕方を考えていく。具体的にいうと、次に状態が変化した時(ここでは正四面体が回転した時)にどの確率でどの状況の変化を行うのかを一つ一つ丁寧に整理していくことになる。
f:id:ryu_uts3:20200629095606j:plain:w200:rightすると右の図1のように書くことができる。仮に今n秒目だとしてそこから1秒進んだ時にどの確率でどう状況が変わるのか視覚的にイメージしていこう。
まずは底面が赤の時(左側のR)。この時は側面は白のみなので確実に1秒進んだところで底面は白にしかならない。すなわち、1秒後にRとなる確率は0、W(底面が白)となる確率は1である。
続いて、底面が白の時。この時は側面3面のうち赤1面、白2面なので、無作為に選ばれる条件下から確率はそれぞれRとなるのが\cfrac{1}{3}、Wとなるのが[tex:\cfrac{2}{3}]となる。以上のことが図1によって表されている。この図は実際に諸問題を解いていく中でも書いていくと良いであろう。自分も東大模試なんかでの答案には図をきっちり書いていた。

すると、ここから漸化式が立てられる。n秒後に底面が赤となる確率をR_n、底面が白となる確率をW_nとおいておくと、(n+1)秒後の確率はn秒後の確率を用いて漸化式的に

\displaystyle R_{n+1}=\frac{1}{3}W_n
\displaystyle W_{n+1}=\frac{2}{3}W_n+R_n

のように表せる。後はここから連立して解いていくのだが、それよりはもう少し楽なやり方がある。ここまで二式立てておいてあれだが、n秒後に赤か白以外になることが無いためR_n + W_n =1という関係式を使って簡略化することができる。つまり一つ目の式にこれを代入してW_nを消去すると、

\displaystyle R_{n+1}=\frac{1}{3} (1- R_n )

とできる。後はこれでR_nについての漸化式となったためこれを解いていけばおしまいである。なお、最初の状態で赤が底に来ているので1秒後の確率はR_1 =0である。

まず、特性方程式を考えて変形をすると(解答に書く時は「これを変形して、」くらいで良い)、

\displaystyle R_{n+1}-\frac{1}{4}=-\frac{1}{3} \biggl(R_n -\frac{1}{4}\biggr)

すなわち数列{R_n-\cfrac{1}{4}}が初項0-\cfrac{1}{4}=-\cfrac{1}{4}、公比が-\cfrac{1}{3}の等比数列となるので、

\displaystyle R_{n}-\frac{1}{4}=-\frac{1}{4}\biggl(-\frac{1}{3}\biggr) ^{n-1}

したがって、

\displaystyle R_{n}=\frac{1}{4}-\frac{1}{4}\biggl(-\frac{1}{3}\biggr)^ {n-1}

となる。一応確認しておくと、n=1のとききちんと確率0となっていることがわかるであろう。これが簡単な確率漸化式の問題だ。

基礎問題2

AとBの2人が、1個のサイコロを次の手順により投げ合う。
1回目はAが投げる。
1、2、3の目が出たら、次の回には同じ人が投げる。
4、5の目が出たら、次の回には違う人が投げる。
6の目が出たら、投げた人を勝ちとしてそれ以降は投げない。
(1) n回目にAがサイコロを投げる確率a_nを求めよ。
(2) ちょうどn回目のサイコロ投げでAが勝つ確率p_nを求めよ。
(3) n回以内のサイコロ投げでAが勝つ確率q_nを求めよ。

続いてはこの問題。一橋大学の問題だが、臆することは全くない。
それでは考えていこう。まず、nに応じて変化するものは投げる人であるので、誰がn回目に投げるかに応じて場合わけをする。すなわちここではAおよびBが投げる確率をそれぞれa_n, b_nとしておくのが妥当であろう。
f:id:ryu_uts3:20200630230058j:plain:w350:right すると、今度は投げる人の遷移を考える。誰がサイコロを投げるかに問わず投げる人がそのままor入れ替わる確率はそれぞれ\cfrac{1}{2},\cfrac{1}{3}とおくことができる。(サイコロの面について問う確率であることを確認していないがここはそういうことにしておくのが「妥当」であろう。あくまで問題文は一橋大の原文のままだ。)そうすると遷移図は右の図4のように書くことができる。したがって立てられる漸化式は以下のようになる。

\displaystyle a_{n+1} = \frac{1}{2} a_n +\frac{1}{3}b_n   b_{n+1} = \frac{1}{2} b_n +\frac{1}{3}a_n

あとはこれを解いていくのだが、ここでもひと工夫が考えられる。この2つの漸化式は対称式のように考えることができるので、a_n+b_n,a_n-b_nの二つを考えてみると、漸化式の和と差を取って

\displaystyle a_{n+1}+b_{n+1} = \frac{5}{6} (a_n +b_n)    a_{n+1}-b_{n+1} = \frac{1}{6} (a_n - b_n)

と考えられる。こうすればその二つが等比数列として表されるからあとは容易であろう。まず数列{a_n + b_n}について、公比\cfrac{5}{6}、初項1であるから、

\displaystyle a_{n}+b_{n} =\biggl( \frac{5}{6} \biggr) ^ {n-1}

同じようにして、数列{a_n - b_n}について、公比\cfrac{1}{6}、初項1であるから、

\displaystyle a_n-b_n =\biggl( \frac{1}{6} \biggr) ^ {n-1}

という二つが導ける。あとは求めるのはa_nの方なので、二つを足して2で割れば終了である。

\displaystyle a_{n}=\frac{1}{2}\left\{\biggl( \frac{5}{6} \biggr) ^ {n-1} + \biggl( \frac{1}{6} \biggr) ^ {n-1} \right\}

となる。以上だ。そしてこの問題は(1)ができればほぼ終了といった感じである。
(2)についてだが、初見で見た時には疑心暗鬼になるかもしれないが、その通りシンプルである。今回、Aが勝つためには自分のターンでサイコロを投げている必要があるので、(1)で求めた確率に\cfrac{1}{6}をかければ良いだけ(6の目が出る)だ。そのため詳しい解説は省かせてもらうが悪しからず。答えは

\displaystyle p_{n}=\frac{1}{12}\left\{\biggl( \frac{5}{6} \biggr) ^ {n-1} + \biggl( \frac{1}{6} \biggr) ^ {n-1} \right\}

となる。
最後に(3)。これもn回目までに、と言っているのでn回目までの話を取っていけば良いだけだ。単純な等比数列の和なので特に困ることもなかろう。自分はここをこのページに書くのに困ったが(笑)。答えは

\displaystyle q_{n}=\sum_{k=1}^{n} \frac{1}{12}\left\{\biggl( \frac{5}{6} \biggr) ^ {k-1} + \biggl( \frac{1}{6} \biggr) ^ {k-1} \right\}
         \displaystyle =\cfrac{1}{12} \biggl \{ \frac{1-\biggl( \cfrac{5}{6}\biggr)^n}{1-\cfrac{5}{6}}+\cfrac{1-\biggl( \cfrac{1}{6}\biggr)^n}{1-\cfrac{1}{6}} \biggr \} = \cfrac{3}{5}-\cfrac{1}{2}\biggl(\cfrac{5}{6}\biggr)^n-\cfrac{1}{10}\biggl(\cfrac{1}{6}\biggr)^n

である。

基礎問題3

それでは最後にもう一問触れて行こう。名古屋大学文系からの出題である。

f:id:ryu_uts3:20200630084531j:plain:w180:right右の図2のような立方体がある。この立方体の8つの頂点の上を点Pが次の規則で移動する。時刻0では点Pは頂点Aにいる。時刻が1増えるごとに点Pは、今いる頂点と辺で結ばれている頂点に等確率で移動する。例えば時刻nで点Pが頂点Hにいるとすると、時刻n+1では、それぞれ\cfrac{1}{3}の確率で頂点D、E、Gのいずれかにいる。自然数n≥1に対して、(ⅰ)点Pが時刻nまでの間一度も頂点Aに戻らず、かつ時刻nで頂点B、D、Eのいずれかにいる確率をp_n、(ⅱ)点Pが時刻nまでの間一度も頂点Aに戻らず、かつ時刻nで頂点C、F、Hのいずれかにいる確率をq_n、(ⅲ)点Pが時刻nまでの間一度も頂点Aに戻らず、かつ時刻nで頂点Gにいる確率をr_nとする。この時、次の問いに答えよ。
(1) p_2q_2r_2p_3q_3r_3を求めよ。
(2) n≥2のとき、p_nq_nr_nを求めよ。
(3) 自然数m≥1に対して、点Pが時刻2mで頂点Aに初めて戻る確率s_mを求めよ。

まずは、状態の遷移の仕方を実験を通して整理しておこう。その中で(1)を回答していけたら良いと思う。今回はn秒時点でどの頂点にいたかと、そこから1秒進んだ時にどう移動するかを考える。
f:id:ryu_uts3:20200630143237j:plain:w350:right 対称的(対等)なまとまりとしては、問題文にもある通りB、D、Eのいずれか、C、F、Hのいずれか、Gの三パターン(以下、パターンP、Q、Rとおく)に分けることができる。というのも、この遷移を考える上では対称軸AGからも言える通り、この三点の組み合わせ2つは位置的に対等であるからだ。この図3を見て貰えば納得できるであろうか。
そうしたら、ここから1秒進んだ時にどのパターンを動くか考えるとパターンPのときは次に確率\cfrac{2}{3}でパターンQへ移動する。ここで注意だが、残り\cfrac{1}{3}の確率でAへと移動することもあるということは意識しておこう。つまり、ここでは全事象の確率がこの3つのパターンに収まっているのではないので、さっきの「足して1」は使うことはできない、ということになる。
続いてパターンQのときだが、このときは確率\cfrac{2}{3}でPへ行き、確率\cfrac{1}{3}でRへ行く。また、パターンRのときは必ずQへ戻ってくる。以上のことを整理して漸化式をそれぞれ立てると下のようになる。

\displaystyle p_{n+1} = \frac{2}{3}q_n~~~~r_{n+1} = \frac{1}{3}q_n
\displaystyle q_{n+1} = \frac{2}{3}p_n +r_n

あとはこれを解いて行こう。今回は先の問題での「足して1」が使えないので地道に一個ずつ求めていくしかないのだが、まずはどれか一つに対する漸化式にするためq_n以外を消去する。すると、三項間漸化式まがいの漸化式が出てくることだろう。

\displaystyle q_{n+1} = \frac{2}{3} \times \frac{2}{3}q_{n-1} +\frac{1}{3}q_{n-1}=\frac{7}{9}q_{n-1}     …①

すると、一つまたぎの項同士が関わっているので、奇数項(n=1,3,5,…)と偶数項(n=2,4,6,…)で考える数列が違ってくることが改めてわかるであろう。するといずれもの初項が必要となるので、すなわちq_1=0, q_2=\cfrac{2}{3}を利用するから、偶奇を分けて考える。この時にしっかりと自分がどの操作を何回行ったかなどミスしないように最新の注意を払って行こう。問題によって様々に注意するべき点はある。そうすると、

1、奇数のとき
漸化式からいえばこれが等比数列と考えられるから、n=2m+1とおくと①より、

\displaystyle q_{2m+1} = \frac{7}{9} q_{2m-1} = \biggl(\frac{7}{9}\biggr) ^ 2 q_{2m-3} = ・・・ = \biggl(\frac{7}{9}\biggr) ^ m q_1 = 0

となる。
2、偶数のとき
n=2mとおくと、上と同じように、

\displaystyle q_{2m} = \frac{7}{9} q_{2m-2} = \biggl(\frac{7}{9}\biggr) ^ 2 q_{2m-4} = ・・・ =\biggl(\frac{7}{9}\biggr) ^ {m-1} q_2 = \frac{2}{3}\biggl(\frac{7}{9}\biggr) ^ {\frac{n}{2}-1}

となる。
これでq_nについては求めることができたので、あとはもう二つに関しての漸化式に代入すれば良いことになる。すなわち、

\displaystyle p_{n} = \frac{2}{3}q_{n-1}    r _ {n} = \frac{1}{3}q_{n-1}

に代入していけば良い。ここで、こちらのnが偶数の場合には楽勝になるのだが、逆に奇数の場合だと少しややこしい。上の2、の場合でおいたmを用いてn=2m+1と定義しておくと、上のmでできた式にこれを変形したもの(m=\cfrac{n-1}{2})を改めて代入することとなる。したがって、

\displaystyle p_{2m+1} = \frac{2}{3}q_{2m} = \frac{4}{9} \biggl(\frac{7}{9}\biggr) ^ {m-1} = \cfrac{4}{9}\biggl(\cfrac{7}{9}\biggr) ^ {\frac{n-3}{2}}
\displaystyle r_{2m+1} = \frac{1}{3}q_{2m} = \frac{2}{9} \biggl(\frac{7}{9}\biggr) ^ {m-1} = \cfrac{2}{9}\biggl(\cfrac{7}{9}\biggr) ^ {\frac{n-3}{2}}

となることから、以上を合わせて

\displaystyle p_n = \left\{ \begin{array}{} 0 ~~~~~~ (n=even)\\ \cfrac{4}{9}\biggl(\cfrac{7}{9}\biggr) ^ {\frac{n-3}{2}} ~~~~~~ (n=odd) \end{array} \right. ~~~~~ r_n = \left\{ \begin{array}{} 0 ~~~~~ (n=even)\\ \cfrac{2}{9}\biggl(\cfrac{7}{9}\biggr) ^ {\frac{n-3}{2}} ~~~~~ (n=odd) \end{array} \right.

と表すことができよう。

では最後に(3)を解いていく。初めてAに戻ってくる時にはその1回前にパターンPの状態になりそこから確率\cfrac{1}{3}をかければ良いことになる。今回、Aにたどり着くのはnが偶数のときなので、

\displaystyle s _ m = \cfrac{1}{3}p_{2m-1} = \frac{4}{27} \biggl(\frac{7}{9}\biggr) ^ {m-2}

が上の式から求められる。ただし注意として、今回の式で適応可能なのは、 (2)のnの条件からm ≥ 2のとき。すなわちm=1のときは別でチェックする必要がある。このときはs_1 = \cfrac{1}{3}であることが明白であろう。

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