化学

化学 基礎〜演習 pt.1 固体の溶解度

それでは実際の問題を見ていきましょう。前回の記事を見ていない方でこの辺りの基礎的な事項が心配な人は、自分の教科書やこの1個前の記事を是非参照してください。

基礎問題

硝酸カリウムの水に対する溶解度は、40°Cで60g、60℃で110gである。40°Cの硝酸カリウム飽和水溶液120gについて以下の問いに答えよ。
⑴ この溶液に溶けている硝酸カリウムは何gか。
⑵ 今、この溶液を60°Cに加熱すると、あと何g溶かすことができるか?(新研究より抜粋)

まずはこの問題を見ていこう。基本的に溶解度の問題は前回の記事で述べた通り、比を意識して解いていくのと求める値を未知の値としておいておくことを考えると良い。今回は溶液全体の質量120gがわかっていて求める質量は溶質のものなので、溶質と溶液の質量比を考えていく。また、溶解度を用いる際には飽和溶液であることを一応確認しておこう。
[解答] ⑴ 飽和溶液中に含まれる硝酸カリウムを\(x\) (g)とおくと、(溶質の質量)/(溶液の質量)を考えて、
$$\frac{x}{120}=\frac{60}{100+60}     x=45(g)$$
となる。
⑵ 加えることのできる硝酸カリウムの質量を\(y\) (g)とおくと、このとき飽和溶液となるから、同じように、
$$ \frac{45+y}{120+y}=\frac{110}{100+110}     y=37.5(g) $$
となる。
非常に基礎的な問題ではあるが、溶質・溶媒・溶液それぞれについてきちんと注意しておくことできちんと理解できるはず。溶解度を用いた質量比だが、特に難しいことは考えず溶質は溶解度を、溶液の質量はそれに100g加えた値を用いよう。定義からそれの正しさは言えるはず。一応だが、右辺の質量に関してそのまま溶解度の値を用いるのではないことに注意。

標準問題

Ⅰ 硝酸カリウムの溶解度は以下の通りである:\(KNO _ 3 / 10°C = 20g , KNO _ 3 / 60°C=110g\)。これを用いて、以下の問いに有効数字2桁で答えよ。
⑴ 60°Cの硝酸カリウム飽和水溶液100gを10°Cに冷却すると、何gの結晶が生じるか。
⑵ 60°Cで硝酸カリウム飽和水溶液100gから水を蒸発させたのち、10°Cまで冷却すると44gの結晶が生じた。このとき蒸発させた水は何gか。
Ⅱ 40°Cにおける硫酸銅(Ⅱ)の溶解度は28.7gである。そこで、40℃の水100gに硫酸銅(Ⅱ)五水和物は何g溶けるのか。なお、分子量は\(H _ 2 O = 18\)、式量は\(CuSO _ 4 =160\)である。

一個目の方は先ほどの問題と同じ要領で解くことが可能だ。
[解答] ⑴ 60°Cの飽和溶液中に含まれる硝酸カリウムを\(x\) (g)とおくと、(溶質の質量)/(溶液の質量)を考えて、
$$ \frac{x}{100}=\frac{110}{100+110}     x=52.4(g) $$
である。さらに、10°Cに冷却した時に\(y\) (g)が析出するものとおくと、10℃では飽和溶液となるから同じようにして、
$$ \frac{52.4-y}{100-y}=\frac{20}{100+20}     y=42.9(g) $$
と求められる。
⑵ まず最初の段階で\(z\)(g)の水を蒸発させるとすると、その段階でも硝酸カリウムが析出する。ただし、最終的な段階では10°Cの飽和溶液になるので、そこまで含めて44gの析出であることから考える。すなわち、(溶質の質量)/(溶液の質量)を考えて、
$$ \frac{52.4-44}{100-z−44}=\frac{20}{100+20}     z=5.6(g) $$
である。

そして2個目の方なのだが、お馴染みの皆さん大好き水和物の登場です。化学基礎でもやったかな。硫酸銅(Ⅱ)五水和物\(a\)(g)が溶けると仮定すると、そのうちの幾分かが溶質に、それ以外が溶媒として作用するものと考える。割合としては分子量や式量を用いて考えよう。
[解答] 硫酸銅(Ⅱ)五水和物が\(a\)(g)だけ溶けるものとすると、(溶質の質量)/(溶媒の質量)を考えて、
$$ \frac{\frac{160}{250} a}{100+\frac{90}{250} a}=\frac{28.7}{100}    a=53.5(g) $$
である。
この系統の問題は計算処理が面倒くさいのが難点なのだが、そこは我慢。化学の問題には複雑な計算処理がつきものなので、ここは普段の勉強で強化していってほしい。

発展問題

右下図に硫酸ナトリウムの溶解度曲線を示す。以下の説明を読み、次の各問いに答えよ。答えの数値は有効数字2桁で示せ。
f:id:ryu_uts3:20200616231004j:plain:w250:right(説明)この図にはA,B2つの交点がある。比較的濃い水溶液の場合のB点(32.4°C、50g)では、硫酸ナトリウム十水和物\(Na _ 2 SO _ 4 ・ 10H _ 2 O\)と硫酸ナトリウム無水物の溶解度曲線が交差している。つまり、32.4°Cより高い温度の溶液からは無水物\(Na _ 2 SO _ 4\)の結晶が析出し、32.4℃より低い温度の溶液からは硫酸ナトリウム十水和物\(Na _ 2 SO _ 4 ・ 10H _ 2 O\)の結晶が析出する。一方、希薄な水溶液を冷却していくと、水の凝固点(0°C)からA点(-1.2°C、4g)までは、ほぼ直線的に水溶液の凝固点が降下していく。
⑴ 60°Cの硫酸ナトリウムの飽和水溶液100gから、60°Cに保ちながら水40gを蒸発させたとき析出する結晶は何gか。
⑵ 60°Cの硫酸ナトリウムの飽和水溶液100gがある。
(ⅰ) 20°Cに冷却させたら何gの結晶が析出するか。
(ⅱ) 60°Cに保ちながら水40gを蒸発させた後、20°Cに冷却させたら合わせて何gの結晶が析出するか。
⑶ A点ではどんな結晶が析出するのか。30字以内で説明せよ。

ラストに新演習から抜粋した比較的難問を紹介。
⑴番は今までの復習程度だと思う。何やら問題文で難しいことが書いてあるが、結局この温度なら析出するのは硫酸ナトリウムの無水和物の方だから、単純に溶解度を考えていく。
ただ今回はいちいち前と同じように考えなくても、水40gに含まれている硫酸ナトリウムがまるっと析出すると考えればそこだけ考えれば問題なし。化学の計算にも工夫はできる。

さて、このままメインの⑵を解説していくが、冷却していく段階で32.4°Cまでは図を見て分かる通り溶解度は上昇しているため、この段階では析出してこない。つまり、析出するのは全て硫酸ナトリウム十水和物\(Na _ 2 SO _ 4 ・ 10H _ 2 O\)の結晶になる、というわけだ。あとは析出する結晶の質量を文字で置いていけば同じような解法が使える。とりあえずここまで解答を示しておこう。

[解答] ⑴ 60°Cの水40gに溶ける硫酸ナトリウムは、溶解度45(g/水100g)であることから、
$$ 45×\frac{40}{100}=18(g) $$
にあたる。
⑵ (ⅰ) 析出する結晶は全て硫酸ナトリウム十水和物\(Na _ 2 SO _ 4 ・ 10H _ 2 O\)である。はじめの溶質の質量は
$$ 100×\frac{45}{100+45}≒31.0(g) $$
である。さらにここでその析出量を\(x\)(g)とおくと、そのうち溶質由来の質量は\( \displaystyle \frac{142}{322}x(g)\)であることから、20°C時点での(溶質の質量)/(溶液の質量)を考えて、
$$ \frac{31.0-\frac{142}{322}x}{100-x}=\frac{19}{100+19} $$

と立式できる。これを解いて\(x=53.4(g)\)となる。

ここまでは良いだろうか?それでは(ⅱ)の方へ行こう。
最初の段階で水を40g蒸発させているので、⑴と同じ分だけの硫酸ナトリウム無水和物も析出する。ここで大事なのは残った溶液も飽和しているという点。現に余分な量が析出していることを考えたら分かるであろう。ここで冷却していくと溶解度が上昇していることから、一度析出したものももう一度溶けていくことに注意。32.4℃において飽和する量をまず切り替わり前の1段階として整理しておく。
すなわち、一部溶解する硫酸ナトリウムを\(y\)(g)とおくと、溶解度が50gであることから、(溶質の質量)/(溶媒の質量)を考えて、
$$ \frac{31.0-18+y}{69.0-40}=\frac{50}{100}    y=1.5(g) $$
となる。ここから\(z\)(g)の硫酸ナトリウム十水和物が析出するとすれば同じようにして、(溶質の質量)/(溶液の質量)より
$$ \frac{14.5-\frac{142}{322}z}{29+14.5-z}=\frac{19}{100+19}    z=26.9(g) $$
と求められる。

最後、⑶ですがおまけのようなものでしょう。
A点より濃度が薄いと氷が析出し、逆に濃いと硫酸ナトリウム十水和物\(Na _ 2 SO _ 4 ・ 10H _ 2 O\)が析出することから、この中間であるA点ではそれらの混合物が析出するのである。

全体的な解説は以上になります。何か不明な点などありましたらコメントやTwitterのDM等でお気軽にお声掛けください。フィードバックを受けて随時更新していくことも検討していますので。

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