ryu.です。
今回は前回に引き続き溶解度についてなのですが、多くの人が苦手とするであろうHenryの法則をメインに据えてわかりやすく書いていこうと思います。
まずイメージから理解する
それでは早速みていこう。単刀直入にいうと、実はこの法則は教科書にやたらめったら小難しく書かれているだけで、理屈のイメージさえできていれば意外と安牌だったりするのだ。
根本的な部分として、まずは「気体の溶解度は圧力に比例する」というのがあるが、ここさえ理解すれば後はなんとでもなる。よりシンプルなイメージとして解釈すると、「上から気体を押さえつけた分だけ溶媒に気体がよく溶ける」ということ。一応下の図1も参考にしていただきたいが、直感的にも理解しやすいのではないか?
具体的な現実の例に則して、ペットボトル飲料の炭酸水を考えてみよう。初めは圧力が非常にかかっていて炭酸も十分入っているが、その後しばらく放っておく(大気圧下)と炭酸が徐々に抜けていく。時間経過を考えたとしても、あの速度での炭酸の抜けはこのHenryの法則で言われる事実が如実に効いている良い例だと思う。
注意点(重要):本来、気体の溶解度については溶媒に接している気体の圧力について考えるのだが、今回は上のピストンを用いて、大気圧や外力などにより発生する圧力が、中の気体の圧力と一致することを利用して考えている。
気体の溶解度と温度
また、同じような話で「温度が上昇すると、溶液中の気体の溶解度は小さくなる」という事実がある。上の炭酸水の例に同じように当てはめてイメージできることだろう。
もちろんちゃんと説明するが、溶質となっている気体分子は温度の上昇によってより激しく熱運動をする。すると溶液の中から空気中へ飛び出しやすくなってしまうためにこのようになるのである。固体溶質の場合においては空気中に飛んでいく心配がないために溶解度が下がることはないのである。
Henryの法則の続き(体積との連関)
そうしたら次に進もう。おそらくここからが厄介になってくる。この気体の体積について考えてみよう。注意だが、あくまで溶けている気体の体積である。残っている気体の層の話ではない。
気体の体積については考えるべき環境が二つ存在する。標準圧力下(1.0×10^5 Pa)と、溶かしている状況(その時の圧力)下である。ここでは温度一定として、圧力のみを主眼に据えて考えて欲しい。
まず、最初に標準圧力下について考える。つまり、溶けている気体分子だけ別の環境(ここでは、それぞれの溶かしている状況から標準圧力下へ移動させる感じ)に引っ張り出して比較してみることを考える。
この場合は、体積を求めるときには圧力が一定なので、温度一定とみなしているから(注:問題によっては温度の変化への考慮を必要とする方があるので注意するべき)、溶けた気体の物質量のみに依存する。すると気体の状態方程式により、そのときの気体の体積は物質量に比例する。下の図で言えば、今我々は点線で囲まれた状況での気体の集合の体積を考えているということだ。
注意点:「圧力が一定」というのはいずれも1.0×10^5 Paのもとに溶けた気体を取り出して考えている、という意味。溶かしている(押さえつけている)状況においてはもちろん圧力の差は存在するし、ここまでの関係性からこちらの圧力には比例関係となる。
続いて、溶かしている状況(圧力)下。つまり、溶けているときの圧力と同じ圧力下をそれぞれにおいて想定する。
この場合は溶かしている圧力と解けている気体分子の物質量が比例して変化している上、温度も一定としているので体積は変化せず一定のまま。こちらも気体の状態方程式から言えることだ。目に見えてその一定性が見えるのは、水を導入したときの気体のくぼみ具合である。下の図3を参照してみて欲しい。
溶かしている状況(圧力)下において溶解している気体の体積は、溶媒に溶かしていない時とその圧力で溶かしている時の体積の差、すなわちどれだけ減少したかによって示される。なお、いずれの時においてもかけている圧力は同じだ。
これを圧力を変えて計算していった場合でも、減少する体積は変化しないのである。これが体積が変化せず一定という意味。もちろん、実際に溶けている気体分子を取り出してそれぞれ溶けていたときの圧力下においたとしても同じことが言える。
Henryの法則の例外
最後にこれだけ。実はHenryの法則に従わない気体もある。塩化水素やアンモニアがその例なのだが、こうした溶解度の大きな気体はHenryの法則には従わないので注意しておこう。
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